男にとって感じるとはどういうことか?:『感じない男』

感じない男 (ちくま新書) 感じない男 (ちくま新書)
森岡 正博

筑摩書房
売り上げランキング : 71335

Amazonで詳しく見る

男性の不感症

哲学者による、男のセクシュアリティについて深く考察した本です。男の射精や肉体的なオーガズムは深いレベルでの快感に必ずしも結び付いておらず、男はたとえ射精したとしても本当は感じていないのではないか、男の不感症もあるのではないか、という問題提起がなされています。

あくまで著者自身の自己分析をベースにした語りであるため、誰にもあてはまる分析ではないと思いますが、一人の男性の性欲のあり方として、同じ男性として、とても参考になります。僕自身にも著者と共有できる部分とできない部分があり、自分のセクシュアリティを深く省みる上で役に立ちました。

一度己の性欲について深く考えてみたい男性におすすめです。また、彼氏の性欲がよく分からないと感じる女性の方にもおすすめです。少なくとも男の性欲というものが一筋縄でいかない複雑なものであることが理解できると思います。

射精の抑圧から解放されるためには、どうすればよいか

この本の主題と遅漏問題とが絡む部分は、男性が危険な方向に行かずにどうやって自己のセクシュアリティに肯定的になれるか、という点です。性欲というのは得てして、征服欲、不安感、孤独感、暴力感情などの否定的な感情と結び付いたり、あるいは社会規範によってそうした否定的な意味付けがなされてしまう現状があります。

すると、男性は自分自身の性欲に対してどこか肯定的になれない部分を持ってしまいます。これは、特に性イメージのズレ抑圧型遅漏の遠因の一つになっているかもしれません。あるいは、遅漏を克服したくても中々本気になって治療に乗り出せない方々の、本気になれない一番の理由がこれかもしれません。自己の性に対する否定感情が自信のなさをもたらし、治そうとする力を奪っているのです。

では、どうすれば肯定できるようになるでしょうか。一番はそうした感情も現状の性欲も全部ひっくるめて丸ごと肯定してくれるパートナーに出会うことでしょうが、人生はそう甘くはありません(笑)。何らかの手段で自己肯定していくしかありません。

僕の場合、自己のセクシュアリティの肯定という点で、オナ禁の影響が少なからずあったと思います。オナ禁によって性欲が一時的に消え去った経験から、性欲そのものが自明なものでないと悟り、性欲がコントロール可能なものだと身体レベルで理解できました。その結果、現状の性欲にあまり囚われなくなったと思います。

囚われなくなったということは、性の何を否定するのか肯定するのか、全部自分で決められることに気付いたということです。自分の性欲を良い意味で機械的に捉えられるようになりました。これは直接の肯定ではないかもしれませんが、大きな意味での自己肯定とつながっていると思います。

オナ禁に限らず、断食やある種のイメージトレーニングなどでも、こうした性欲の変化を感じ取ることできる場合があります。能動的な心身の働きかけによって自分の性欲がコントロール可能であることを知ることが、自己性の肯定の近道になるかもしれません。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加